20 【アーカイブ05】SEXUALITY研究ノート《前史・上》

 

 「教育学文献学習ノート」シリーズを書き始めたのが2020年8月下旬。facebookで長文を掲載できる「ノート」機能が廃止されてしまい、しばらくは私のタイムラインに「超」長文の「学習ノート」シリーズを掲載し続けていたのですが、これではたまたまクリックしてくれた方が延々とスクロールして閲覧されるだけでも手間がかかるだろうと考え、2021.8.10に「佐藤年明私設教育課程論研究室のブログ」を開設。「教育学文献学習ノート」シリーズは(22)-1中村清二論文「民主教育論」の検討以降このブログに掲載しています。それ以前の「学習ノート」バックナンバーも、ほっとくと私のタイムラインの彼方に消えてしまうので、必要なものはブログに【アーカイブ】として再録しています。

 ところで、「教育学文献学習ノート」シリーズの公表開始からまもない時期に、それとは別に「sexuality文献学習ノート」というシリーズも立ち上げ、1つ2つの文献についてfacebook上に書いた記憶があるのですが、fbをいくら検索してもそういう投稿は見つかりません。4日前に前期授業の成績評価作業がようやく終わり、約1ヵ月の「夏休み」をゲットしたので、後期「ジェンダーと教育」の準備作業とも絡めてgender/sexuality関係の文献を読み、「教育学文献学習ノート」とは別立てでsexuality関連の発信をしたいと考えました。記憶の中にある「sexuality文献学習ノート」は発見できなかったんですが、fb検索でいろいろ過去のsexuality関連発言や読書ノート等が見つかったので、これからスタートする「SEXUALITY研究ノート」の《前史》として、この際まとめて【アーカイブ】としてブログに掲載することにしました。

 ここにはsexuality教育に関する学会発表資料・科研費報告書などは含まれません。それらを含めれば膨大な量になってしまいますし、それに学会発表・論文のように気負わずにその時々に気楽に書いた文章をふり返ってみたいと考えました。
 収録した文章は全てfacebook上に投稿したものです。記憶する限りではほとんどが「公開」設定で投稿しています。なお、投稿によっては読者から貴重なコメントをいただき、それにより議論がはずんだり深まったりした場合もあります。私が公開設定で投稿した場合はコメント者もコメントが公開されることは了承されていたと思います。しかしこれはあくまでfacebookのタイムライン上を過去へとどんどん流れて忘却されていくやりとりですので、その時コメントしていただいたことを私が後に自分のブログで固定的に保存して公開し続けることを望まれない方がおられたとしても当然だと思います。というわけで、このアーカイブに再録するのは私自身の文章・発言に限定します。



                                                                            (2012.7.7投稿)
 On sexuality education my main concern is how to treat privacy of students, parents, teachers.
In Japanese textbook (5th grade) learning on human birth begins with fertilization, so there are many students who wonder how father's sperms meet mother's egg.
 So I think learning on human birth should begins with sexual intercourse.
 But when students learn on sexual intercourse at school, some of them will go back home and ask parents, "How about your intercourse?" and so on.
 I think it is good for children and their parents to talk to each other about human birth, but on the other hand parents have their own rights to protect their privacy even from their own children.
I think it is one of the PRIVACY PROBLEMS in sexuality education.


 

工藤美代子 快楽(けらく)-更年期からの性を生きる  中公文庫
                                                                            (2012.9.9投稿)
 十数名の女性(一部男性も)へのインタビュー記録を中心にして、主として50代以降の性行動についてまじめに考察した本。 性(sexuality)を人生トータルの中で考えるなければならないことを深く納得させてくれる。
 「50代の性」が学校における性教育の課題に含まれるべきかどうかはわからないが(高校生くらいだと、親が間もなくその世代にかかると思うので、ライフサイクルの中で性を考える学習として取り組めるかもしれない)、生涯学習の課題であることは間違いない。 問題は当事者がその「学習の場」を適切に確保できるかどうかである。公民館の教室で語り合う…というのは日本ではまだまだ難しいように思う。多くの場合はお金をかけて信頼できる相談相手を探し出すしかないと思われる。 

 


                                  (2012.9.20投稿)
 Finally the last evening has come staying in NZ.
 I'm in the lobby of the hotel to use free wi-fi for the sake of posting this message.
 Today I met Associate Professor Louisa Allen in the Faculty of Education in The University of Auckland whose major is sexuality education, same as me.
 Louisa was such a nice and familiar person.
 We talked to each other in a quiet lounge only for graduate students and scholars in the university on some issues in sexuality education. In the near future I will make a record of my interview and make up a thesis on sexuality education in NZ.
After that we moved to a restaruant in the campus also for undergraduates and staffs. Then she showed me around the City Campus of The University of Auckland. We departed in the park next to the campus.

 

 

 

池川明 胎内記憶-命の起源にトラウマが潜んでいる  角川SSC新書

                                                      (2009.4.8-2012.11.26 2012.11.26投稿)
 読みかけで長く研究室の本棚に放ってあった本。
 読み始めた2009年は、毎年附属小学校で行なっていた生命誕生の授業を、初めて僕単独ではなくて、今は転出された元同僚のA先生と共同で実施した年。
 当時、乳幼児の発達の専門家であるA先生にこの本を見せたら、首をかしげておられました。 確かに、「生まれる前のことを覚えている子どもがいる」という主張はにわかには信じがたいものです。
 この本には、子どもが語る自分がお腹の中にいたときの話や、生まれてくるときの話がたくさん紹介され、それが事実に合致していて、しかも子どもに直接語られたことはない(つまり教えられて知ったわけではない)という事例がたくさん紹介されています。しかし一方で、子どもがいろいろ語ったことが実際とは違っていたという事例が紹介されていないので、子どもの空想がたまたま事実と一致していた都合のよい事例だけを集めたのではないかという疑いを拭えません。
 ただ、産婦人科医である著者の以下の叙述を見ると、本書の意図するところが少しわかってきます。
「我が子への胎内記憶の聞き取りは、科学的調査ではなく、親子の絆を深めるためのツールであることをお忘れなく。」(P.183)
「胎児は何もわからない未熟な存在だ、と誤解していると、妊婦はなかなか赤ちゃんとの絆を育むことができず、母親としての自覚や覚悟ももちにくいものです。それを防ぐため、赤ちゃんへの語りかけを勧めることにしたのです。」(p.175) 



                               (2015.8.31投稿)
 成田での待ち時間に再びつらつらと…
 1年前、3度目のAuckland訪問。5年ぶりに科研費をゲットして、9月の研修団の訪問以外にも海外渡航が可能になったので、NZでのsexuality educationの授業参観の可能性を探り始めました。
 まず小学校Oratia District School訪問時。校長先生に同校での性教育について質問して驚いたのは、この学校では性教育をやっていないということ。NZの小学校は5歳〜10歳で日本の子どもたちより1年以上下の年齢構成であり、男子だとまだ思春期に入っていないくらいで卒業ですが、そういう発達的な話は女性校長の口からは出ませんでした。性について教えるということについて親の合意が得られないというのです。性教育は中学校(日本より複雑な制度なんですが)から行なうもの、というお話でした。
 このことについてLouisaに訪ねてみましたが、前述のように彼女の研究対象は中等教育が中心ということで、小学校で性教育が行なわれていないというのが全国の一般的傾向なのかどうかは判明していません。いろんなルートで調べてみる必要があります。
 次に行った中学校Remuera Intermediate(7−8学年の2学年のみ)は、毎年生徒代表が校内を案内してくれて、見学時間中は先生たちより生徒との交流が中心になることもあり、この学校での性教育はどうなっているかを尋ねることをうっかり忘れていました。帰国後に、当日応対してくれた副校長先生にこの点を質問するメールを出したのですが………(😭)
 最後に行った高校Pakuranga Collegeでは、Robin Williamsみたいな風貌のエネルギッシュな校長先生に同校の性教育について尋ねたところ、その場ですぐに性教育を担当している女性教師を呼んでくれて話をすることができました。次の機会にぜひ授業を見たいと行ったら、今年度(NZでは2月頃から)が始まる頃に連絡をしてと言われました。その頃にメールしてみると、「Sorry, この学校をやめることになった。」………(😭) まあこの手のことはスウェーデンで何度も経験をしたことなので、ここでへこたれるわけに行きませんが、実際にsexuality educationを担当している先生と直接交渉できた唯一の事例だけに残念で。
 今年もまた同じ学校に行くことになると思います。小学校はともかく中高については改めて交渉をしてみたいと思います。
 自分で選んだ研究なので誰に文句を言うこともできないんですが、外国での授業研究というのは実現するまでにものすごく労力を使います。
 科研費は2017年度までで、その後停年まで2年の状況で改めてもらえる可能性は低いと思うので、ここ2年くらいの間になんとかNZのsexuality educationを参観する機会を得たいです。

 

 

                                  (2016.1.25)
 教育課程論特殊講義第13回。最終の1回前。
 受講生は学校教育コースの3年生1人。欠席もせず真面目に受講してくれています。

 今日は小学校教科書のピンポイント比較検討。
 5年理科にヒトの誕生が初めて登場した1992年版の6社の教科書を相互比較する作業をしてもらっている間に、僕は2002年版を相互比較。
 学校五日制、教育内容3割減(いい加減な表現ですが)となって初めての教科書です。 他の内容項目でもあったことでしょうが、小5理科ではせっかく第6期1989年改訂学習指導要領で登場したヒトの誕生が、この第7期ではヒトかメダカか「いずれかを選択して調べるようにするものとする」となってしまいました。
 その結果、6社中4社では写真のような「インデックス方式」(僕が勝手に名付けました。写真向かって右のページの縦の辺に色分けと切り込みを入れて、メダカ(魚)コースと人コースを分けて表示しています。
 いずれも先にメダカ(魚)のページが4〜8ページ、後に人のページが6ページ程度あります。
 これは大日本図書 

 

 1992年版小学校理科教科書紹介(1)                                       (2016.2.1)
 教育課程論特殊講義第14回=最終回。
 たった一人の受講生が先週の作業結果=初めて小学校理科に「ヒトの誕生」学習が登場した1992年版教科書の6社教科書相互比較結果を報告してくれました。そこで触れられていたことの中から、胎児の成長過程の図示の部分を紹介します。
まずは学校図書。

 

 

 2002年版小学校理科教科書紹介(2)                              (2016.1.25)
教育出版教科書は、綴込み見開き?(なんと表現したらいいのかわからないんですが^^;)レイアウトを採用しています。上が閉じた状態。下が開いた状態。

 


 

(画像が多いため、いったんここで区切ります。)

 

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